TEACHER 教員紹介

What kind of person?

社会学・メディア

戸江哲理准教授

専門: 家族社会学・コミュニケーション論

「自分がしている(できる)ことを他人もすべきだ(できる)と思い込まないこと。他人がしている(できる)ことを自分もすべきだ(できる)と思い込まないこと。他人がしていない(できない)ことを自分もすべきではない(できない)と思い込まないこと」。ぜんぜん一言じゃないですね…。

PROFILE

  • 出身大阪府です。もっとも、泉州ですから、他県の人がイメージする「大都会・大阪」とはずいぶん違うと思います。
  • 好きな食べ物苦手のほうでは海老と貝ですね。辛い物もダメで、食べると、顔から大量の汗が噴き出します。
  • 趣味趣味とは少し違いますが、バスケットボール部の顧問をしているので、たまに練習に参加しています。
研究テーマアイコン

私の研究テーマ

家族らしさをやりとりから考える。

学部は法学部だったのですが、その頃から社会学の本を読んだり、授業を受けたりもしていて、大学院では社会学を専攻しました。当時から、コミュニケーションと家族のどちらにも関心があって、博士後期課程からは両者が交わるところでの研究に着手しました。具体的には、子育てひろばという乳幼児を連れて親たちが集まる場所でのフィールドワークを続けてきました。ここ数年は、それに加えて、研究仲間たちと、「太平洋戦争後、日本人はどんなふうに暮らし、生きてきたのか」というテーマで全国の老若男女100人に聞き取りを行うというスケールの大きな研究プロジェクトを進めたり、家庭での普段の暮らしをビデオカメラで収録してもらうという、少し新しいタイプの研究プロジェクトを実施したりもしています。

Question

家族社会学とはどんな研究分野ですか。
文字どおり、結婚や子育て、家事、介護などの家族生活にかかわることを研究している分野です。高校までの科目では家庭科がもっとも近いと思います。ただし、これらの営みが(日本はそれほど進んでいないとされますが)社会全体で担われるようになったり、逆にそれらにタッチしない生きかたを(本人が望むか望まないかはともかく)歩む人も増えているのが、先進諸国の特質でもあります。その意味では、家族社会学は「人のlife(暮らしかた・生きかた)」の研究でもあるといえるでしょう。研究を進めるうえでは、こうした動向をふくめて家族のことを広く、また詳しく把握する必要があることから、家族社会学は社会学のなかでも、とくにデータにもとづいて論じることを重んじる傾向があるということもいえます。
子育てひろばでのフィールドワークについてもう少し詳しく教えてください。
子育てひろばでは毎日、幼い子どもを連れた親たち――やはり大半が母親です――がやってきて、親どうしで語り合ったり、子どもたちを遊ばせたり、スタッフが企画するイベントを楽しんだりしています(みなさんのなかにも、お母さんに連れられて行ったことがある人がいると思います)。逆にいえば、それだけの場所なのですが、子どもから少し離れて、母親どうしで語り合う時間は貴重な息抜きのひとときとなります。私が進めてきたのは、自らも子育てひろばのボランティアとして働きながら、このような普段の様子をビデオカメラで撮影させてもらって、それをデータとして研究するというものです。ここで、私のもうひとつの研究分野であるコミュニケーションが絡んできます。これらのビデオデータには、たとえば母親たちが子どもや子育ての愚痴を語らう場面が収められています。それらをつぶさに検討することで、子育てひろばで過ごす時間がどんなふうにして居心地のよいものになっているのか、そのしくみを明らかにしようというわけです。このときに採用している研究の方法論が「会話分析」(Conversation Analysis)です。…書いているうちに、フィールドに出たくなってきました。
では、会話分析についてもう少し詳しく教えてください。
簡単に説明するのは難しいのですが(笑)、会話分析は会話「の」分析ではないということが、ひとつのポイントです。会話というか、コミュニケーションを研究する方法論は他にもたくさんあります。会話分析は、ハーヴィー・サックスというアメリカの社会学者が今から60年ほど前に、研究仲間たちと編み出したものです。ですから、会話分析は普通名詞ではなく、固有名詞なのです。その特質は、やりとりを「なぜ今それを(why that now)」という、やりとりをしている人自身が絶えず直面している問いに定位して検討するということにあります。また、私たちのやりとりは、言葉を使ったものに限定されません。たとえば、「バイバイ」と言う代わりに、手を振っても別れの挨拶はできます。会話分析はこういった言葉を使わないコミュニケーションも研究対象にふくめます。この意味でも、会話分析は「会話」(だけ)の分析ではないのです。もうひとつ、会話分析はひとつの技術であり、その習得にはトレーニングを要するということもポイントですね。本や論文を読んだだけでは、できるようにはならないのです。私も会話分析を専門とするベテランの先生のもとで学び、今も――ぼちぼちとではありますが――研鑽を積んでいる身です。

総合文化学科に興味のある学生の皆様へ

「やってみたいことがいくつもあって、今の時点ではひとつに決めきれない」と悩んでいる人にとっては、入学後にあれこれ「味見」してから決められるという、「先延ばし」ができる利点があるのではないでしょうか。逆にいえば、その猶予期間をどう使うかという問題が入学後も依然として残るわけですから、入学してからどれだけ意欲的に、そして主体的に取り組めるかということが大切になってくると思います。「文系全方向」の学科というと、「広く浅く」というのが大方のイメージだとは思いますが、本人しだいでは「広く深く」も可能だと思います。実際に、そういう学生たちを見てきました。